大阪高等裁判所 昭和59年(行コ)36号 判決
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【判旨】
一当裁判所も、本件各明示行為は行政処分に当たらず、控訴人の本訴請求を失当として排斥すべきものと判断するものであつて、その理由は、次に付加するほか、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。控訴人が当審において新たに提出した甲号各証によつても、以上の認定判断を左右することができない。
1 旧国有財産法(大正一〇年法律第四三号、以下「旧法」という。)における境界査定は、行政庁が官民有地の境界を一方的、強制的に決定することを内容としており、それに不服のある隣接民有地所有者は訴願することができ、また、行政裁判所に訴訟を提起できるものとされていたから、これが行政処分であることは明らかであつた。ところが、新憲法施行後、民主主義の要請から、隣接地所有者の意思いかんにかかわらず一方的になされる右境界査定の制度は廃止され、新たに制定された現行国有財産法(昭和二三年法律第七二号、以下「法」という。)には、当初官民有地の境界を定める規定は置かれなかつたが、昭和三二年法律第一〇七号による法の一部改正により、第三章の二立入及び境界確定の規定が設けられ、合意を基調とする境界確定の制度が取り入れられた。すなわち、各行政庁の長はその所管に属する国有地と隣接する民有地との間の境界が明らかでないため当該国有地の適正な管理が行えない場合に、① 隣接地所有者の立会、協議を求め、その協議がととのつた場合にはその協議結果に従い、境界を確定することができ(法三一条の三)、また、② 隣接地所有者に対し立会、協議を求めたにもかかわらず正当な理由なく立会わないため協議ができないときは、当該隣接地の所在する市町村の職員の立会を求め、境界を定めるための調査を行い、右調査に基づいてその調査にかかる境界を定めることができる(法三一条の四)ものとし、ただ、この境界を定めようとするときは、国有財産地方審議会に諮問しその意見に基づかなければならず、かつ、通知、公告などの所定の手続を履践しても隣接地所有者が所定の期間内に境界につき異議がある旨の不同意の通告がなく、境界の確定に関し同意があつたとみなされる場合でなければならないものとされた。そして、これとは反対に、隣接地所有者が立会、協議に応じたものの、協議がととのわなかつた場合及び理由なしに立会わず各行政庁の長が定めた境界に関し所定の期間内に不同意の通告をした場合には、境界が確定しないまま手続が終了し、各行政庁の長においてそれ以上に境界を確定させるための行政上の手続を何ら進めることができないものとされている。
2 以上のような境界確定についての法改正の経緯、旧法の境界査定処分とは異なる特色があることなどに照らすと、法三一条の三ないし五の境界確定の協議、境界の決定に関しては、各行政庁の長は隣接地所有者に対し境界確定のための立会、協議に応じるよう求めうるにとどまり、何らの優越的地位も認められておらず、隣接地所有者が境界につき合意するか否か、あるいは各行政庁の長において定めた境界につき異議がある旨の不同意の通告をしないか否かは隣接地所有者の全くの自由意思に委ねられており、換言すれば、右①、②(法三一条の三、四)の境界確定は、各行政庁の長と隣接地所有者とが対等の立場で協議し両者の合意により、あるいは、右協議はなされないが、厳格な要件のもとに協議に代わるべき手続がとられ、境界につき不同意の通告がなされず、合意が擬制されることにより成立するものであつて、その性質は両者間の私法上の契約と解すべきであり、それはまた、地番と地番との境界を定めるものではなく、国有地と隣接民有地との所有権の範囲を定める契約というべきである。
3 控訴人は、本件各明示行為の無効を確認する以外には、不動産登記手続上現に受けている不利益を排除する方法が見当らないと主張するが、本件各明示行為により控訴人の所有地である宇治市木幡南山一九番地の一の山林の一部が本件道路に取込まれたとすれば、民事訴訟により、所有権に基づいて右部分につき所有権確認の訴を提起し、あるいは境界確定の訴を提起すべきものである。
二以上の次第で、控訴人の本件訴を不適法として却下した原判決は相当であ<る。>
(田坂友男 阪井昱朗 島田清次郎)